去る11月1日、テロ対策特別措置法が期限切れを迎えました。国際社会が連帯して「テロとの闘い」に立ち向かう中、日本は任務を半ばで放り投げ、現場から引き揚げることになりました。
「テロとの闘い」は遠い海の彼方でおきている他人事ではありません。日本の将来にとっても、われわれの日常生活にとっても影響があることです。このままでは、例えばこんなことが起きるかもしれません!
①国際社会からの信用を失い、日本は蚊帳の外におかれます。
②ガソリンや灯油などの値段が上がり、家計にも影響がでます。
→中東地域は世界の6割以上の原油を生産し、日本が輸入する原油の9割を生産しています。その地域の政情が不安定になれば、エネルギー価格はますます高騰します。
③麻薬や武器が世界中に広まり、国際的な犯罪が増え、治安が悪くなります。
→世界の違法な麻薬生産の9割はアフガニスタンで行われています。
大連立に踏み切ろうとした民主党・小沢代表が党内外から反発を受けている中、自民党の伊吹幹事長が記者団に対して、「小沢さんは憂国の情を理解してもらえず、がっかりされたんじゃないかな」と語った場面がテレビに放映されていました。
テロ特措法の延長を巡っては、与野党で激しい攻防がありました。しかし法案の本質を衝いた攻防であったとはいえないように思います。本来、安全保障や外交に関する事項は、国益を第一に据えた議論をすべきであって、政党間の政争の具にすべきではありません。党の論理が優先され、議論すべき大事に至らなかったことは、残念でなりません。特に政権奪取を目指す政党であれば、ただ反対姿勢をとり続けるのではなく、少なくとも失効前に対案ぐらいは出して、責任ある政党としての姿勢ぐらいは出してほしいと感じたのは私だけではないと思います。
もちろん、途中で不祥事が連続したことも審議に影響しました。イラク戦争への転用疑惑、航海日誌破棄問題、給油量訂正隠蔽問題、元防衛事務次官の軍需専門商社との癒着、と呆れるほどに膿が出てきました。こうした問題は徹底的に追及しなければなりません。そして、今後二度とこのような問題が発生しないよう、防衛省の組織改革を断行しなければなりません。こういったことは、国会内で議論を尽くしていく必要があるということには異論ありません。
海上阻止活動からの撤退は、日米の同盟関係はもとより、国際政治の中での日本の国際協力の姿勢が問われる重大な問題です。アメリカが日本に気兼ねなく、北朝鮮のテロ支援国家指定解除を行うのではないかとの警戒も現実味を帯びてきます。私は日本が世界の潮流に逆行して、「一国平和主義」に引きこもることを憂慮しています。「テロとの闘い」からの後退は、日本の世界の中の立ち位置を左右しかねない問題です。是非、この法案の重要性について改めて認識し、国家の根幹に立った是々非々の議論を進めてもらいたいと願います。防衛省の疑惑追及を進めながらも、同時並行で新法を議論することも、或いは場合によっては先に新法を成立することは可能なはずです。いたずらに審議を引き延ばすのではなく、きちんと日本の姿勢を打ち出し、一刻も早く国際社会の平和維持活動を再開してもらいたいものです。
このような国益に関わる一大事にすら、参院選後に生まれたねじれ国会によって立法府の機能が停止してしまい、政策決定をすることができない状況は打開しなければなりません。その為に、政策協議を図る手段として大連立を考えたというのであれば。そしてこの際、踏み込んで恒久法の是非、自衛隊の海外派遣の原則についても党派を超えて議論すべしと本気で考えたのであれば。私は冒頭の小沢代表の「憂国の情」に拍手を送りたいと思います。
ここで改めて、テロ対策特措法及び自衛隊の補給支援活動に関するポイントについて、ご参考までに整理してみます。
1. 「テロとの闘い」とは
日本人24名を含む2973人が犠牲となった2001年の米国同時多発テロ。実行グループのアル・カーイダは、アフガニスタン及び周辺地域においてテロ訓練などの組織活動を行っていました。この地域は、アル・カーイダ以外にもテロ組織が跋扈しており、テロの温床となっています。国際社会は、この地を再びテロの温床としないという強い意志の下、「不朽の自由作戦」と名付けられた「テロとの闘い」を開始。
2. 活動の内容
「不休の自由作戦」は、陸上での掃討作戦に加え、インド洋における①海上阻止行動、②国際治安支援部隊(治安維持のためのアフガニスタン政府支援)、③地方復興支援(軍民共同での地方復興活動)などが行われています。日本は憲法の制約により、この幾つかある活動の中で、①「海上阻止活動」のみに参加してきました。イスラム国家であるパキスタンやイラク戦争に参加しなかったフランス、ドイツ、カナダなどを含め、これまで約40カ国が参加する国際的な活動となっています。アメリカの戦争という言い方は正しくありません。
3. 海上阻止活動の成果
アメリカ、イギリスなど世界8カ国の協力の下、6年間にわたって行われてきました。武器の流出入の阻止、麻薬売買による資金の流出入の阻止、テロリスト流出入の阻止などに効果を発揮してきました。例えば2004年には4万件1千件あった無線照会は、2006年には9千回に激減。インド洋から不審船が激減したことを示しています。また麻薬についてもこれまで約12トン押収されました。
洋上補給は、これまで11カ国(アメリカ、イギリス、フランス、ニュージーランド、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ギリシャ、カナダ、パキスタン)に実施してきました。当初はアメリカへの給油が殆どでしたが、2006年以降の実績でみると、パキスタンやフランスが増え、給油・給水回数の半分以上はパキスタンに対して行われています。洋上給油はどの国にもできる作業ではありません。給油活動は、受給艦との距離を維持し、同じ速度(通常12ノット程度)で並走しながらの作業となります。高い操艦技術が求められます。給油中は引火の危険から空砲を撃つこともできません。よって無防備になるゆえ、護衛艦やヘリによる哨戒をしながらの、不測の事態を常に想定した緊張感を要する作業となります。
1991年の湾岸戦争の際、日本は約1兆7千億円の資金を拠出しました。それにもかかわらず、国際社会からはお金だけ出して終わりの日本と揶揄され、あまり評価をされませんでした。今回、提供した燃料の総量は48万キロ、経費的には220億円ですが、湾岸戦争と比べるまでもなく、国際社会から大変高い評価と感謝の声が寄せられてきました。
4. 憲法違反か
国連決議のない活動に自衛隊を派遣するのは違憲との主張がありますが、海上阻止活動はテロとの闘いを各国に呼びかけた安保理決議1368号に応えて各国が行っているものであり、国連の決議を踏まえた活動です。また、集団的自衛権の行使であり憲法違反との意見もありますが、そもそも補給支援活動は憲法が禁止する「武力の行使」ではなく、更に非戦闘地域で行うことから他国の武力行使と一体化することもなく、憲法に反する活動ではありません。
5. 新法案の骨子
現在、自民党が衆院に提出している新法案は、日本が支援活動を行う海上阻止活動を評価し継続を求める国連安保理決議1776号を新たに引用し、海上自衛隊の活動を海上阻止活動に従事する艦船への給油・給水支援に限定したものです。実施区域は「非戦闘地域」要件を満たすインド洋及び沿岸国領域と明記し、期限は1年としたものです。洋上補給という日本の支援が、各国の役割分担の中で定着してきたことを踏まえ、活動の内容・範囲を絞りこむことによって、審議を早期にまとめ、海上阻止活動に一刻も早く復帰できるように図ったものです。






