2007年6月22日 文・銀河鉄道
引き続き、アーミテージ・レポートの「米国と日本:指導の例」「米国と日本:いかに同盟を導くか」「米国に要求されること」「日本への提言」「米日同盟への提言」「リージョナル・ポリティックスへの提言」「グローバル・ポリティックスへの提言」の部分(要旨)を紹介する。
(米国と日本:指導の例)
アジア地域における国力、影響力、ナショナリズムの台頭、資源の需要の増加など、新たな国際関係の構造が進展する中、米国が単独でアジアを管理するのは不可能である。
ある人にとっては、米国と中国による「共同管理」は、合理的な将来の構造のように見えるようであるが、米中は、価値システムが異なる上に、我々の世界と地域における利益に対する明確な理解を欠いており、上のような見方は過大評価であると考える。中国との「共同管理」は、米国に対する中国の重量と価値に用心深い、地域における友好国や同盟国との関係においてリスクを伴うものである。
同時に、米国と日本のみが中国に向き合うという二極構造は、効果的ではない。なぜなら、これは、他の地域の国々に対して、二者択一を迫ることになるからである。ある国は、米日側となるだろうが、ほとんどの国は、中立か、中国側となるであろう。これは、有力な模範である米日のデモクラシーを弱め、地域を冷戦時代か19世紀のバランス・オブ・パワー論理に帰らせることになり、地域の安定を恵むことはなく、中国が肯定的に変化することにも貢献しない。東アジアの安定は、米国、日本、中国の関係の質がカギとなる。
アジアにおける最良の構造は、アジアのほかに有力国による地域問題への積極的な参加と結合した、米国の強さ、コミットメント、リーダーシップを維持することに係っている。米国とのパートナーシップ、共有されている民主主義の価値に基づいた、日本、インド、オーストラリア、シンガポールにおける開放的な構造は、 法のルール、拡大する政治的自由に基づく、自由市場、継続する繁栄を強調するアジアにとってのアジェンダを理解するのに最も効果的な方法である。米日は、ベトナム、ニュージーランドのような国とも、我々の価値観を共有するような関係も確立すべきである。すべてのこれらの努力は、中国との間で協力の範囲を拡大する手段 となる。
このような方式をアジアで実施することは、アジアすべての成長と方向に積極的に影響するカギとなる。
(米国と日本:同盟をいかに導くか)
同盟は、米国のアジア戦略の核心であり続けるべきと考える。この戦略が成功するカギは、同盟が共通の脅威を基礎にした排外的なものから、一層開放的で、共通の価値と利益を基礎としたなものへ進化し続けることである。2020年において一つ確かなことは、米国と日本は、民主主義体制で、同じ価値を共有する世界の最大の経済国であるということである。このことは、米日同盟が、過去においてそうであったように、アジアの未来を形成し、地球の均衡に重大な要素であり続ける理由である。
今日における日本の役割を考察すると、日本は、第二の資金支援国として、国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行などの国際組織を支えている。日本は、また、自身の防衛力と米軍のプレゼンスへの支援によって、アジアにおけるバランス・オブ・パワーを支えている。日本は、2004年のインド洋津波に際して、5億ドルを超える資金と自衛隊の派遣という援助を提供した。日本は、経済発展、民主主義の原則、地球規模の協力において肯定的なモデルとなっている。
2020年には、日本の経済力は、相対的に低下するであろうが、日本の指導者たちは、安全保障と外交のより高い役割のために、国際システムでの日本の地位の向上を主張している。米国は、日本が自信を持ち、それを実行していくことを必要とする。2020年には、国際システムを支えるという以上に、有力な「ミドル・パワー」になることは最良である。反抗的で、怒りっぽく、ナショナリスティックになることは最悪である。米国の戦略は、ナショナルな感情を融和させる日本に高い期待を抱き続けるならば、日本は、民主主義の価値手段に基づいた地域の リーダーとして、有力なモデルであり続けるであろう。このような理解の上で、以下、米日関係における経済と安全保障の二つの側面を論じる。
(経済)
国際的な経済パワーとして、日本には以下の3つの要因が重要である。
■ 政府の債務。日本の債務の対GDP(国内総生産)比は200%に近付いている。もし、利息が上昇すれば、債務負担への融資はますます困難になる。
■ 人口統計。日本の人口は減少を続けている。高齢化によって労働人口が減ると同時に社会保障コストが増大する。
■ 生産性の高上昇。日本の製造業は、世界標準では効率的であり続けているが、サービスと金融分野での低い生産性が足を引っ張っている側面がある。規制緩和の継続は、産業界に革新と、未発達のサービス分野に拡大とを促す上で必要である。
過去十数年間における中国経済の成長と将来の見通しは、多くの日本と米国の人にとってトラブルのように見える。ある人は、中国の成長をゼロサムゲームでとらえて、中国の利益は、自らの損失と評価している。より正しい見方は、中国の台頭を米日の製造センターであり、消費者市場、投資の資金といった中心的資源を 米日に大きく依存しているというものである。
未来において、米日は、アジアの経済繁栄と安定のカギを有するだろう。米日は、自由貿易協定に向けた協議を開始することによって、自由貿易と経済統合の効果を推進し、確実にすべきである。自由貿易協定(FTA)は、日本の農業者と「コメ文化」に圧力をかける。自由化の挑戦に対する最良の解決策は、農業人口の減少と農業従事者の引退に調和させる形で、次の10年間の関税の低減を段階的とすることである。同時に日本人は、自由化は農業の消滅ではないことを理解すべきである。コメ生産農家も、牛肉やリンゴなど自由化が進んでいる分野と同様、高い付加価値産品の生産にシフトするであろう。自由貿易協定は、疑いなく、米国資本の日本での投資の窓を広くする であろう。これは、高齢化社会での構造調整を行う日本にとって助けとなるものである。次の20年間で米日の自由貿易協定は、国内直接投資における日本のレベル、GDPの2.1%規模を米国レベルの14%まで引き上げることを目標とすべきである。
(安全保障)
米日同盟における安全保障の側面は、過去数年間において顕著に成熟した。米日の安全保障関係は、二つの基礎的原則に基づいて運用されている。米国は、日本とその施政権下の地域を防衛することと、日本は、極東の安全のために、国内の基地と施設を提供することである。日本が自身の防衛に自己制限を課したこの内容は 、最近まで、不可避の「子供と大人の関係」を強制させる枠組みを形成していた。日本の自衛隊がアフガニスタンでの米軍の作戦を支援するためにインド洋に派遣されたこと、イラク再建のため、イラクの内外に派遣されたことは、東アジアという地理的範囲を越えて貢献をするという日本のイニシアティブを示した。日本の海外で の積極的な参与は、その世界的利益を反映し、また、米日間における過去の安全保障上の格差を減少させた。
米日は2005年に、04年12月に東南アジアで発生した津波災害で、緊急に必要とされた、人道的救助のための軍隊派遣や財政支援を行った。米日は、インド、オーストラリアとともに、コア・グループを結成し、国連が実質的支援に乗り出すまで、国際支援の管理や協調を行った。
地域におけるミサイル拡散という重大な脅威を重視して、米日は、ミサイル防衛の技術と構想を協力して開発し、現在は、ミサイル防衛システムの生産と使用の段階にある。この重要な事業に協力することによって、共同作戦システムや短期間に重要情報を共有する能力などを改良する、ミサイル防衛の指揮とコントロール システムから相助の利益を得ることができる。また、日本は、軍事物資の輸出禁止策を変更し、米国に対する除外措置を講じた。すべてのこれらの措置を通じて、同盟は、現実の安全保障環境に課された挑戦に対応するための防衛協力において急速な進展を遂げた。
将来の観点からいえば、必要なものは安全保障の協調だけではなく、日本の役割と自己認識の見直しである。日本は世界的な影響力を有する国であるが、最近までは、安全保障分野において厳格な制限を行ってきた。歴史は、日本のこの領域での消極性を説明できるが、将来は、こうしたアプローチが直面する脅威に対して 有効であるかどうかということと、日本自身の世界のリーダーとしての役割に対する望みというものを協調した思考を要求する。米国は、日本の安全保障のカギとしての側面であり続けるが、日本は、地域の防衛のために適切な支援を行うことにより、同盟をより対等なものへとしなければならない。
(米国に要求されること)
米国は、自分自身をアジア太平洋のパートナーとみなし、アジアにおけるすべての領域の問題に参与すべきである。米国は現在、世界の他の地域での戦略的集中といった困難にあるが、もし、アジアにおける関与が気まぐれであったり、米政府の高いレベルの参与が十分でなければ、地域における権力ヒエラルキー の移行が生じるであろう。特に顕著な事件が発生しなくても、中国がその能力を拡大し続けた場合、また、地域が米国の存在に対し、信頼を失った場合、米国の影響力は徐々に溶解を始めるであろう。我々は、ハードパワーとソフトパワーの双方を有するような能力の改良が必要であると認める。アジア太平洋地域は、地理的に、大洋、海や戦略的海峡によって占められている。つまり、海軍が働く戦場である。こうした条件に合った軍事戦略を採用することと軍事テコ入れを継続して行うことが求められる。
(日本への提言)
1.日本は最も効果的な政策決定が可能になるように、引き続き、国家安全保障制度と官僚体制を強化すべきである。日本は、内部の協調と安全保障の情報を保持しながら、対外及び安全保障政策を、特に危機の際において、速度、鋭敏さ、柔軟性とともに統御する能力を有することが必要である。
2.憲法に関する討論は、純粋に日本の人々によって解決される問題であるが、米国は、同盟のパートナーが、我々が共有する安全保障上の利益に関し、より広範囲に負担に応じることを歓迎する。
3.自衛隊の海外派遣に関する立法の議論も奨励される。米国は、安全保障のパートナーが正当な状況の下、短期間に派遣を行う一層の迅速性を有することを望む。
4.我々は、防衛省と自衛隊が現代化と改革を行うために適切な資源を得ることが重要だと考える。
5.自己制限の日本における討論は、国連安保理入りの問題と関連がある。常任理事国は、軍事力の使用を伴う決定を行い、他国にこの決定に従うよう求めることになる。全面的な責任を負うことなく、このような決定に加わることの不公平は問題となる。米国は引き続き、日本の目標を積極的に支持していくべき である。
(米日同盟への提言)
1.米日は、安全保障と軍事における協力を継続して強化すべきである。具体的な内容は以下のとおり。
■ 平和維持活動、人道支援、災害救助における日本の能力を強化すべきである。
■ 武器輸出禁止三原則を廃止すべき。国内防衛産業の防衛関連技術開発を増進すべきである。
■ 米日は、CG(X)、タイコンデロガ級のミサイル巡洋艦(イージス艦)の後継艦船など主要システム、次要システムを共同開発すべきである。
■ 米日は、防衛産業間の密接な協力を確立すべきである。
■ 日本は、自衛隊の代表を米太平洋軍(PACOM)に駐在させ、米側代表と共同スタッフ事務局を設けるべきである。
■ 米日統合作戦指揮所の十分な運用を通じて、作戦運用レベルでの米日の協調を増大させるべき
■ 核・ミサイル拡散、過激派やテロリストの活動、他の地球規模の有事に関する情報協力を強化すべき。米日は、(米国の)国家地理空間情報局(National Geospatial-Intelligence Agency)の活動において密接な連携を図るべきである。
■ 米国は、f-22編隊の日本への派遣をできるだけ早期に行うべき。米国は、日本の航空自衛隊による米国が開発した最近の戦闘機システムへのアクセスが確かとなるように探究すべきである。
■ 安全保障環境、我々の関心を表現する方式の変化につれて、二国間の協力を強化する役割や使命を再評価し、能力を増強する地域を明確にし、二国間の命令と指揮システムを改善すべきである。
2.米国は、日本を核攻撃から守るというコミットメントを含む、我々の安全保障上のコミットメントの最も主要な部分は、繰り返し強調されるべきである。
3.米日は、包括的な自由貿易協定の交渉を開始する意思を表明すべきである。
(リージョナル・ポリティックスへの提言)
1.米日の利益は、中国の未来の方向によって大きな影響を受ける。中国に対する協調的な同盟アプローチを発展させるために、密接に協議すべきである。米日は、中国が責任あるステークホルダーになるための道を明確にすべきで、境界となるキーポイントは、北朝鮮やイランが(核開発などでの)行動を変更す るようなレジームを促す上での中国の協力を求めること、台湾へのアプローチにおいて平和的手段のみ用いること、である。
2.米日は、インドとの間でそれぞれの戦略パートナーシップを強化し、三国間協力の適当な機会を求めるべきである。民主主義と自由の価値を共有することは、連携強化のための政治的基盤となる。
3.米日は、安全保障面での協力、近い時期においては朝鮮半島に関する協力を引き続き強化すべきである。北東アジアの5か国(米、日、中国、韓国、ロシア)の間の構造的議題を識別することは、(朝鮮半島)問題の解決における多国間アプローチにおいて有効である。
4.米日は、統合されたASEAN(東南アジア諸国連合)が、米、中国、日本との関係を拡大させるだけでなく、米日が擁護する規範と安全保障の履行に基づいた域内の任務に取り組むべきである。ASEANの将来のカギは、単一の経済、金融圏の創設である。インドネシアの指導者たちは、そのような将来を計画しており、米日は、ASEANに繁栄、民主主義、安全保障をもたらすインドネシアの努力を支援すべきである。
5.米日は、オーストラリアとの三国関係において、人権と信教の自由から経済成功の普及などの協力を強化すべきである。
6.米日は、地域の海洋安全保障政策の形成と実行においてリーダーシップの役割を継続すべきである。
7.米日は、先進国経済の自由化というボゴール合意の期限である、2010年に日本で開かれるAPEC(アジア太平洋諸国経済協力会議)首脳会議の成功のための準備を始めるべきである。
8.米日は、東アジア首脳会議と現在存在するトランス・パシフィックの会議、たとえば、APEC、ASEAN地域フォーラムなどの汎アジア・フォーラムの補完的な関係の形成に努めるべきである。ともに会議に参加して、これら組織が民主主義と法のルールを支援するアジェンダを実行するように奨励すべきである。
(グローバル・ポリティックスへの提言)
1.米日はエネルギー協力を強化すべき。主要なエネルギー消費国(米、日、中国、インド、韓国)の対話は、領土要求や資源の競争ではなく、技術、効率性、市場原理に基づいたアジェンダを設けるべきである。
2.米日同盟は、気候変動に関する国家と地域の努力を強化、統合するのに適しており、、先進国と発展途上国の懸け橋となるべきである。
3.テロとの戦い、発展という中東の問題において、開発支援などの日本の豊富なソフトパワーを、地域の過激主義成長への対抗策とすべきである。
4.貧困や感染症の解決において、日本は世界のリーダーとしての資格を有する。米日は、この問題での支援戦略について定期的に協議すべきである。
5.米日は、世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界保健機関(WHO)などの国際組織において特別な責任を負っており、これらの組織での各アジェンダの形成にリーダーシップを発揮すべきである。(了)






