2007年6月13日 文・銀河鉄道
2月16日にアーミテージ前国務副長官とナイ元国防次官補を共編者とする報告書「米日同盟一2020年までアジアをいかにして正しい方向に導くか」が米国のシンクタンク「戦略と国際問題研究所」(CSIS)から発表された。アーミテージとナイは、2000年にも共編者となり、報告書「日米の成熟したパートナーシップに向けて」(通称アーミテージ・レポート)を作成しており、 今回の報告書は、 「アーミテージ・レポート2」と言える。1回目の報告書は、その作成後に、アーミテージがブッシュ政権下で国務副長官を務めたことから、米国の対日政策に影響を与える内容として広く注目を集めた。
2008年の大統領選挙後に、アーミテージやナイを始めとする報告書の執筆者が政権入りするかどうかは不明である。しかし、執筆者の多くは、これまで政府の要職を経験した人々であることから、同報告書の内容は、08年以降の政権の対日、対アジア政策に一定の影響を与えることが予想される。
報告書の特徴は、中国を将来のアジア地域における大きな変数ととらえていることである。また、中国が軍事力を行使する可能性のある相手として、台湾についても比較的詳しい分析をしている。以下、中国と台湾の記述部分について紹介したい。
中国については、2020年までに予想される「課題と機会」について説明している。中国は、地域の成長のエンジンであり続け、「支配的な地域のパワー」になる可能性があるとしている。同時に、以下のような不安定要素も取り上げている。高齢化社会、脆弱な社会保障ネット、発展の不均衡の拡大、システム的な汚職、雇 用不安、銀行と財政システムの不完全さ、民族問題、環境問題などが挙げられている。このように国内に諸問題を抱えることから、対外環境については安定を求める可能性があると推論している。一方で、共産党政権は、国民に対し、政権への支持を求めるため、ナショナリズムを利用するという可能性を指摘し、こうした要素は、 米国や日本との関係を制約すると指摘している。
対米、日関係における他の制約要因として挙げているのは、人権、信仰の自由、政治システムなどにおける価値観の相違である。価値観の相違は、外交政策に結びやすく、米国の利益に否定的な影響を与えるとして、具体的な例には、スーダン、ベネズエラなど「ならず者国家」との関係強化を挙げている。
外交政策における一つのカギとして、「国外のエネルギー資源へのアクセス」を挙げている。中国のエネルギー不足は、拡大し続けており、中国は供給源の多様化を図っているが、米国や日本や他国は、中国のエネルギー需要の増大に大きな影響を受けていると指摘した上で、こうした趨勢の下、資源価格の高騰、環境悪化 、領有係争海域での資源開発などの否定的な結果が招来されるとも予測している。同時にこうしたエネルギー問題の深刻化は、エネルギー効率化やクリーンな石炭の生産技術、原子力などでの新たな協力の機会にもなりうるとしている(レポートは、エネルギー要素について別枠コラムを設けて詳述している)。
続いて、経済成長に連動した過去の軍事力の増大の事実を指摘している。軍の近代化は、台湾との戦争に焦点が置かれたものとするとともに、周辺とのハイテク戦争を戦う能力を向上させていると述べている。この関連として、陸海空などの軍種間で、購入、訓練、兵站、戦略などの統合が進められていることが挙げられて いる。(沿岸海軍から)外洋海軍への標榜は、資源やシーレーンの確保を企図したものとされている。
2020年の中国については、政治の自由化が進み、市場経済を支援する制度が確立した、責任ある利害共有者(ステークホルダー)となり、国民や周辺国に対してより責任ある行動をとる可能性があるとした上で、反対に、重商主義や保護主義的な経済的制度、排他的なナショナリズムが採られ、国際規範に違反し、隣国に脅 威を与えるようになるとの可能性も指摘している。中国は今後、上述したような二つのケースの選択地点に立ち続けるので、前者を選択していくようなインセンティブ(誘因)を与えていくことが肝要としている。






